【代表 内山インタビュー】洗濯サービスは手段の一つ。「子育てしやすい未来」を目指して

前編では、内山さんのアクティブな20代の体験談を伺いました。後編では、世界一周から帰国してからのこと、『コドミー』起業の背景、内山さんのこれからに迫ります。

┃保育園のサブスク、残るは洗濯

― 世界一周から帰国してからは?

フリーランスとしてコンサルティングの仕事を始めました。

2016年には法人化して従業員も入れて事業拡大もしたものの、自分自身がコンサルとしてバリバリやっていけるのは40代ぐらいまでだと思っていて。ずっと、何か他事業を立ち上げたいと考えていました。

その後、縁あって飲食料品ECベンチャーを共同創業しましたが、2023年に退任。このころからコンサルの事業は減らしていたので、退任後は、少しゆっくりしました。

その期間、人生で一番長くこどもとの時間を過ごしたのですが、一緒にいればいるほど「この時間をずっと大切にしたいな」って思ったんですよね。もう、1分1秒でも一緒にいたいんですよ(笑)。

ちょうどその年から下の子が保育園に入って通い始めたんですが、前よりも送り迎えをよくするようになって改めて「毎日毎日の繰り返し」に負担を感じました。衣服を持って行って、持って帰ってきて、家で洗濯するのも大変。

「この洗濯、誰かに任せられないかな?」と思ったんです。

すでにそういうサービスがあるか調べてみたら、園服のレンタルはあるけれど、こども本人の衣服を洗濯するサービスはなくて。

次に起業するなら、日本の社会課題を解決するような大義あることをやりたいと思っていたので、「このサービスから始めよう」と思ったんです。

― 保育園って、意外とまだアナログなんですね。

2018年から連絡帳の電子化、2019年からオムツのサブスク化が始まってかなり普及してきていますが、洗濯のサブスクはまだでしたね。

今は、4世帯中3世帯が共働きの時代。こども1人でも大変なのに、2人目3人目を産んだら、幸せよりも負担が増えていきそうな気がしてしまう人も多い。そうなったら、もう2人目3人目なんて産まなくなるじゃないですか。

もし親の負担をグッと減らせれば、こどもをたくさん持つことに前向きになれて、少子化対策につながるはず。この『コドミーランドリー』は、その一助になると確信しました。

― 内山さんご自身が現役の保育園児パパだから、すごく説得力があります。


そうですね、自分事だから本気になれる、というのはあると思います。
少子化の課題を認識している人、生身で子育ての課題と向き合っている人、事業を立ち上げることができる人、それぞれは世の中にたくさんいるはずですが、それが重なった人って少ないんじゃないかな、と思い、「自分がやるしかない」と思いました 。

┃初めてのサービス、初めての業界

― 立ち上げにあたって、苦労したことはありますか?

大きく分けて三つあります。

一つ目は、私個人の課題。

家族を養う責任がある中で、うまくいくかどうかも分からない全く新しいサービスに大きなリスクを取ってまで挑戦するのかと、すごく考えました。でも、今やらなかったら絶対に後悔するなと。

二つ目は、未知だった保育園業界を知ること。

保育園は行政からの補助金で成り立っているところもあり、なので、人材採用やサービス利用の考え方が一般企業と考え方が違うところがあるんです。保育園経営者の方々から色々教えていただいて勉強しましたが、すごく新鮮でしたね。

三つ目は、サービスの価格設定。

親の負担を減らした一方で家計を圧迫してしまったら、使ってもらえないですよね。どんなサービスも同じですが、ユーザーが使い続けられる価格と、サービス提供側のオペレーションが成り立つ価格、両者のギリギリのラインを見出すことは永遠の課題です。


― ちなみになぜ、これまで個人の衣服を洗濯するサービスは無かったのですか?

その答えは単純だと思っていて、オペレーションコストがかかりすぎるからです。既存の洗濯代行やクリーニングと同じ概念でやっていては、『コドミーランドリー』も成り立ちません。

だから、オペレーションを分解して、そぎ落として、できるところは効率化する。一方で、ちゃんと洗濯の品質は保つ。ここが私の一番のチャレンジポイントです。

― 最適化理論は、内山さんの得意分野ですもんね。(前編参照)

そうでしたね(笑)。事業パートナーの協力を得ながら工夫した結果、今は1日あたりのコストを200円以下にまで落とすことに成功しています。

┃コストカットへの挑戦

― 具体的に、どのような工夫をしているんですか?

エリアを限定して物流コストを抑える、個人の衣類は洗濯ネットから出さない、超大型の業務用洗濯機で一気にきれいに洗う、たたむ作業は簡略化、等の工夫をしています。

回収から乾燥まで、基本的に洗濯ネットから衣服を出さず、最後は軽くたたむだけ。

もし個人の洗濯をネットからばらしてしまったら、衣服に書いてある名前を見ながら合わせなくてはならない。その作業を無くすことで、大幅なコストカットを実現しました。

衣服をどこまでたたんで欲しいかは、色んな要望があると思うので、今後マーケットの反応を見ながら、もっと簡素化して安くできないか、を判断していきます。

― 洗濯ネットはオリジナルですか?

はい。洗濯業務の事業パートナーであるCoLの永松さんや、洗濯ネットの専門メーカーの株式会社ナカノさん、無印良品のプロダクトデザイナーだった水谷妙子さんと相談しながら試行錯誤して作っています。

洗濯・乾燥品質を維持するために洗濯中にある程度衣類が動く空間を作りつつ小型にもできる形状を工夫したり、水と風が還流しやすいように網目を大きくデザインしたり、洗濯中に開いてしまわないように、横からの引っ張りでは開かないタイプのチャックを採用したり・・・随所に工夫をしています。

(※)水谷妙子さん:無印良品で商品企画・デザインを13年間務めた後、整理収納アドバイザーとして活動を開始。『ものとかぞく』代表。

― 洗濯ネットに入れたままでも、しっかり洗えているんですか?

洗濯の品質については何度かテストも行って品質を確認しています。最新の大型業務用洗濯機で洗っているんですが、業務用洗濯機はステンレスなので、基本的に綺麗な環境だし、お湯で洗うので汚れが落ちやすく、還流するから再汚染もない。実は、家の洗濯機で洗うよりもずっと綺麗だし、衣類へのダメージも少ないんです。

綺麗に、かつ大量に洗濯できる。これもコストカットの秘訣です。

┃アウトソースで心にゆとりを

― 遂に手ぶら登園が実現するんですね。

荷物が減ると気軽にこどもを抱っこできて、よりスキンシップを取れるようになります。

朝の準備のストレスが減れば、親のイライラが減って、より親子関係が良くなる。親がイライラしているとこどもにも悪影響ですから、心のゆとりはとても大事なんです。

『コドミーランドリー』は、分かりやすく「洗濯サービス」と言っていますが、手ぶら登園を叶えるための手段の一つです。親の心にゆとりを持たせたい、その手段がまずは「洗濯」だった。私の中では、常にそういう整理です。

それと、夫婦喧嘩の大半って、こどもに関することだと思うんですよ。それをちょっとでも減らせたらなって。

― 夫婦関係にも!保育園にもメリットはありますか?

もちろんです。『コドミーランドリー』は保育園の洗濯物(※)も請け負っているので、保育士さんの業務負担も減らせます。

保育士さんって、洗濯したくて保育士になったわけではないじゃないですか。だから、洗濯はプロに任せて、その分こどもたちと向き合ってほしいですね。

あと、選ばれる保育園になるためにも、洗濯サービスの導入は有効です。

実は数年前から、保育園の数とこどもの数が徐々に逆転してきているんです。数年前は待機児童がたくさんいたけれど、予測の10年以上も早く少子化が進んでいるから、エリアによっては保育園の経営が成り立たなくなっていて、閉園数も増えているんです。

立地や園の教育方針だけでなく、保護者の負担が少ないことも、園を選ぶ際の大きな要素になるはずです。

(※)保育園の洗濯物:ふきん、おしぼり、エプロン、ぬいぐるみ、園帽子など。

┃親はもっと楽していい

― ここまで聞くと、『コドミーランドリー』はお値段以上の価値があると感じます。

そう言ってもらえてうれしいです。

目先のゴールは、このサービスを全国の保育園に広げて、全国のパパ・ママのストレスを減らすことです。

少子化対策において、お金を出すこととルールを変えることは国の役割。一方で、サービスを作ることや文化を変えていくことは、我々事業者や民間企業の役割。その両方があって、はじめて子育て支援も成り立っていくと思うんです。

私は、株式会社コドミーとして、できることをやっていきたいですね。

そして、私自身ももっと保育園の送迎をしたいと思っています。ママがいると「ママ~」になっちゃうので、私が送迎する時間は、娘を独占できる数少ない時間なんですよ。「パパ~」ってしてくれるから(笑)。

― なんて尊い時間!内山さん、今後の展望は?

次は、送り迎えの問題と、親が仕事などでいないときのこどもの居場所を解決したいですね。

ファミリーサポートは結構ハードルが高いので、もっと「気軽に」かつ「信頼できる人に頼める」手段を生み出したいんです。

うちはまだ小さい会社ですけれど、ある程度パワーが出てきたら、行政に対しても訴えかけていきたいですね。

― まだ始まったばかりなんですね。

そうですね。

親って、もっと楽していいと思うんです。

愛情があるのは大前提で、それはもう皆んな分かっている。その上で、アウトソースできるものは外に任せて、もっと楽していいんですよ。

たまにはこどもを預けて、一息つくのも、仕事に集中するのもOK。そういう文化を、もっと広げていきたいですね。今のこどもたちが親世代になったとき、もっと明るい日本になっていることを願っています。

これは私の幼少期のことですが、寝る前に母がオリジナルの物語を聞かせてくれたんです。「かずやくんの大冒険」みたいな(笑)。

小さいときに創作的な物語を聞くと、想像力が発達するらしくて。私の右脳が活発なのは、母がそういう時間を持ってくれたおかげだと思っているんです。

だから、パパ・ママはもっとゆとりを持って、こどもと過ごす時間を持ってほしいですね。

そのために、まずは親が楽できる環境を作っていくこと。

これが私のミッションだと思っています。

【インタビューを終えて】
前編・後編に渡って、内山さんのバックボーンとサービス誕生の裏側をお届けしました。いかがでしたか?

『コドミーランドリー』はただの洗濯サービスではなく、その先に様々なベネフィットを生み出す次世代サービスであることが分かりました。

皆さんも、賢くアウトソースして、心にゆとりを持ってみてはいかがでしょうか。きっと、家族全員の人生が変わるはずです。

『コドミーランドリー』詳細はこちら

Interview & text 安藤小百合